妖怪だって観光したい!! ~肝試し~上田市丸子に住む怪異と伝説たち~
「あれは何年か前のとある夏の夜のことでしたねぇ。わたし、珍しく夜中まで残って仕事していたんです。職場では空調がきいていたんですけどね、外に出るとなんとなくジメッとする、熱帯夜ってやつなんですかねぇ。あれだったんです」
「一人で家までの出勤路を歩いてねぇ。わたしの仕事場は田舎の山の中ですから、夜に歩くと人影がまるで見当たらなくて、街頭がポツン、ポツンと道をユラ~っと灯してるだけなんです」
「暑いのに妙に背筋が寒くてねぇ、やだな~こわいな~って道をタッタッタッターっと小走りに家に向かって急いだんです。するとですね、小さなバス停が見えてきて、まあそのバス停が屋根のついた小さな小屋みたいなバス停でね、おい、待てよ、もしかしたら~、うー寒い、ここ物凄い寒い、女性がポツンと座っているんだよぉ」
「変だな変だな~こわいなこわいな~って横ぎるとですね。なんか後ろに気配を感じるんですよねぇ。でも靴音はしないし、やだな~おかしいな~って、パッと振り返って見るとですね。誰も居ないんですよ。考えすぎか、よかったなぁ~って。安心して元の方を振り返ると」
「目の前にスーッと先程の女性が」
「PITAPA落としましたよ、って」
(長谷川篤の適当に作ったどうでもいい話 より~ ※1)
さて、いかがだったでしょうか。
夏といえば暑い。暑い夜といえば背筋が凍るような怪談。
こわいなこわいな~って話を集めたくなるもんです。
まあ、ありがたいことに僕は霊感なんてありませんし、鹿教湯温泉やら丸子でそういった話で人が死んだとか呪い殺されたとか言う話は耳にしません。
まあ、誰かが作った都市伝説や田舎伝来の民話にあるような物は探せば結構でてきますけど。
僕は水木しげる先生のファンであり、所謂にわか妖怪マニアだったりするので、こういった話は結構興味深い。
例えば、長野県の民話を色々と見てみると、山、川、湖といった自然が豊富であるため、龍、蛇、鬼、自然の妖怪が多いとか、陸地版の浦島太郎の話があったりとか(ちなみに最後はおじいさんじゃなくて龍になります)、歴史的背景やその地方の文化、風習が妖怪を見ることで推測できたりします。
まあ妖怪っていうのは、大体が「河童がいるから水辺に近づくな」とか「農作業をサボると泥田坊※2が現れる」、「食事をとってすぐ寝ると牛になる」なんていう子供への戒めから生まれたものですからね。
もし長野県内の妖怪について知りたいのでしたら、下記のサイトなんかを参考にしていただければと思います。
さて、前段が長くなってしまいましたが、このブログは観光支援用のブログ。
妖怪妖怪と騒ぐのは少し筋が違うというもんでしょう。
なので今回は、丸子地域の『観光』資源に関連する伝説・怪異を2つご紹介させていただきます。
有名な話なので実はパンフレットに載ってたりするんだけどね。
鹿教湯温泉 文殊堂の龍
さて。
早速ですが、僕の住む鹿教湯温泉の一番の観光名所である文殊堂。
この文殊堂の天井には絵が描かれています。
この写真をよく見てください。
なんだか違和感がありませんか?
そうです。
龍の頭と胴体が離れていますよね。
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
心霊写真だぁ!!
と、まあ絵なんだしそういう反応は望めませんが、じゃあなぜ龍の頭と胴が離れているんだ?
「絵描きの凡ミス?」
「塗料が禿げた?」
「そこだけ板を張り替えたとか?」
むぅー、可能性がある分完全否定はしませんが、鹿教湯温泉ではこの「首なし龍」についてこんな伝説があります。
「文殊堂の天井に描かれた龍は、あまりに素晴らしい出来栄えでまるで生きているようなものでした。
そしてその龍に意思がやどり、夜になると実態となって文殊堂の下の川で水を飲みに降りてきたというのです。
何度も夜に水を飲みにやってきた龍は、とうとう刀で首を落とされ、天井の絵も首が落ちた姿になり、以降龍は動かなくなったとのこと」
いわゆる、素晴らしい作品や古い物には魂が宿るというお話ですね。
例えば『妖刀村正』※3とか、ちょっと経緯は違いますがちょうちんお化けや、唐傘お化けなどの『付喪神』※4なんかもそうです。
この話にはもう一つ説があり「刀で切り落とされたのではなく、勝手に動かないよう絵自体を首なしに描き変えた」との話もあります。
確かに写真を見ると胴体と顔の位置関係がちょっと変に見えますね。
とにかく、龍が動いて川に水を飲みに来るというくだりは同じのようです。
こういった知識を持って改めて観光名所をめぐると面白いもんですね!
霊泉寺温泉 丸子の鬼 柏木
鹿教湯温泉から車で10分ほど。
鹿教湯、大塩と合わせて、丸子温泉郷と呼ばれる霊泉寺温泉にまつわる話です。
実はこのお話、以前ブログでやってます。
多少妖怪に意識がある人ならば知っている、平維茂が紅葉という鬼女を討ち取るお話、
『紅葉狩り』※5というお話があります。
残念ながら(?)この紅葉狩りは戸隠の方のお話なのですが、この戦いの後に現れるのが、丸子の鬼『柏木』なのです。
言い伝えや調べる限りで、丸子以外はっきりとした場所は分からないのですが、
どうやらこの柏木はかなり手ごわかったようで、平維茂もかなりの手傷を負います。
その際、この霊泉寺温泉を見つけ体を癒やしたのだそうです。
ちなみに霊泉寺温泉の看板では、鹿教湯や霊泉寺の近くにある独鈷山という山に紅葉が住んでいたことになっており、柏木は登場していません。
諸説があるということですが、確かに霊泉寺温泉の湯ならば、体の傷を癒やす伝説ができてもおかしくはない素晴らしい泉質なので納得できますね。
霊泉寺という名前もぴったりです。
いかがでしたでしょうか?
一応、この2つが今のところ僕が知っている丸子の怪異が関わる伝説です。
結果2つとも観光地として愛され今に至るのですから、昔の妖怪退治した人々も退治された側も多少は報われてるのかもしれません。
他にも鹿教湯温泉の名前の由来などの伝説がありますが、ちょっと怪異とは違うんで今回は省略します。
他にも上田市やその周辺地域では、
龍の子太郎のモデルとなった「小泉小太郎 伝説」
陸の浦島太郎こと「甲賀三郎 伝説」
など、探せば色々出てきます。
他にももっと語りたいことは多いのですが、これ以上話すと長くなる上に観光とは関係ない話になってしまいますので。
もしも鹿教湯だけでなくどこか観光地に行くときは、
その土地の歴史・伝承などを、土地柄を知った上で推理してみるのもいいかもしれません。
そして車や電車でいろんな場所を巡ってみましょう!!
えっ?
なんで車や電車みたいな乗り物に乗るかって?
そりゃお兄さん。
あたしら霊には、「足」がありませんから。
おあとがよろしいようで(笑)
読んでも読まなくてもいい注釈
※1 『長谷川篤が適当に作ったどうでもいい話』 全108話。怖くはないが聞いたら死ねる。鹿教湯に住むUMAや、部屋に入ってきた蚊のせいで徹夜する話が聞ける。そしてもちろんこの話も適当に作ったどうでもいい話である。
※2 『泥田坊』 一つ目で指が三本。泥田から上半身だけだして「田を返せ~」と言ってくる。結構怖いビジュアルだけど、バイオハザードに出てくるクリーチャーっぽくて格好いい。
※3 『妖刀村正』 徳川家絶対殺すソード。『名将言行録』という本には打倒家康のため、真田幸村が持っていたとも。やたらゲームに登場する。ちなみに「村正」自体は戦国時代ではユニクロ並みに大量生産されている。
※4 『付喪神』 九十九(つくも)神とも。九十九年も長い歳月が経てば、物が魂を持って動き出す、多分昨今の擬人化ブームのA級戦犯。唐傘お化け、提灯お化けなど比較的かわいくそこそこインパクトのあるやつが多いので、妖怪の集合絵では高確率で背景にいる。
※5 『紅葉狩り』 絵のように椀に張った酒で鬼女の正体を映し、見事討ち取ったとされる話。一目見ると妖怪浮世絵に見えないほど美しく柔らかい印象の絵で、とってもいいんだけど、平維茂の知名度が低いため認知は低い悲しさ……。
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