夏の自由研究 上田市丸子の妖怪と伝説 ~ツッコミどころ満載の民話~
夏休み。
前回もお話したとおり、やはり学校の宿題は、夏を謳歌する学生たちの目の上のたんこぶと言えます。
ドリルや書取のような単純作業なら、最後の日に一気にやってしまうのも簡単なのですが、
読書感想文や自由研究、工作の宿題なんかはそうはいかない。
とくに高学年になってくると、自由研究といいながらそこそこ高度な作業を求められることもしばしば。
テーマが決められていたりして「地域の歴史」とか「地域の文化」みたいな内容の、研究を求められることもあるでしょう。
かくいう僕も、かつて地元について新聞だか作文だかを作ってください、みたいな宿題をもらったことがあります。
ダウンタウンがいた! と返答するわけにもいかず、調べれば調べるほど悪いところばかり出てくるもんですから、
地元の公園にある木の実を適当に拾って、種類を調べて掲載するという真面目なのかやる気がないのか微妙な方法で課題をクリアしました。
そんな僕が、皮肉にも学生の頃と同じように、「地域」についてブログのネタを探していると、図書館でなかなか面白そうな本を見つけました。
丸子の民話をたずねて 丸子民話の会
丸子に伝わる、伝説や逸話などをまとめた、いわゆる民話集です。
子供の頃はほとんど興味がありませんでしたが、
大学時代に水木しげる先生の妖怪辞典を読んでいたものですから、
せめて今住んでいる場所の民話や伝説くらいは知っておこうと考えたわけです。
読んでみると、土地柄にあったものや、物的証拠なども残っていてけっこう面白い。
新しい観光の素材にはならないものの、ちょっとした小話程度にはなるなと思いましたので、今回は息抜きということにして紹介しようと思います。
ただ量が多いので、全て紹介するわけにはいきません。
それに淡々と書くつまらないので、ちょっと僕が「おかしいな」「変だな」と目についたやつだけをピックアップし、関西人らしく真面目に突っ込んでいきたいと思います。
けっこう過激に突っ込むかもしれないので、不快に思われた方はごめんなさい。
天狗の怒り 西内・鹿教湯
天狗の伝説は日本の歴史の中でもかなり古くから登場します。
牛若丸(源義経)が幼少の頃、鞍馬寺で天狗に鍛えられたというのは有名な話ですね。
天狗は山の神や、それに仕えるものとされているので、日本国内どこにでも逸話が残っており、県内のすべてが山である長野県にも当然伝説が残っています。
そしてその数多い天狗伝説の一つが鹿教湯温泉にもありました。
話を要約すると、
昔鹿教湯温泉の山奥には天狗が住んでいた。
そこに、ある時隣の村(青木)の若者が無断で炭焼きを始めてしまった。
それに怒った天狗は、若者を連れ去り、こう一言。
「村人が炭焼きをするのは許す。ただしよそ者テメーはダメだ」
若者は崖から落とされて死んでしまいましたとさ。
完
差別がひどい!!
その土地の土着神的な感じだから、分からないでもないけど、心狭すぎッス。天狗さん。
あと原文の、「みじんに砕けて死んでしまいました」ってナチュラルに怖いわ!
それに最初は注意とかしてあげてよ。
もしかしたら迷って入ってきただけかもしれないじゃん。
「あ、悪いことしてる。殺そう」って発想が一番怖いです。
鹿教湯温泉、死にゲーすぎるだろ……
結論:他人の山で勝手なことをしちゃいけないよ、って戒めのお話。
タバコのポイ捨てしたら、天狗にティウンティウンされるので絶対にやめましょう。(※1)
大明神の主 西内・鹿教湯
昔は神様もわりと身近な存在で、人前によく姿を現すことがありました。
そもそも日本には八百万の神といって、日本の人口の15分の1くらいの人数がいるわけですから、標準的な学校のクラスなら2~3名はクラスメイトに神様がいる計算になります。
お次は、そんな神様とちょっとやばい人の昔話です。
別所地域がまだ一面が森で、人が住んでいなかった頃のお話。
上田から木を切りに木こり達がやってきました。
みんなが上田に帰っていくなか、長太郎という男だけ一人小屋に残ります。
すると大坊主がやってきて、「相撲とろうぜ」と言ってきたので長太郎は相撲をとりました。
長太郎は負けそうになったので、大坊主をまさかりでぶちのめしました。
次の日、その大坊主の血が大明神岳の宝庫まで続いていた。
つまり大坊主は大明神岳の主、つまり神様だったのだ!
完
長太郎……こいつSAN値0だ。(※2)
いきなりやってきた大坊主は明らか不審者なのに、平然と取っ組み合う長太郎。
負けそうになったので、躊躇なくまさかりで攻撃する長太郎。
庭一面を血の雨を降らせる、ブッチャーやシークもドン引きな長太郎。(※3)
こいつはダメでしょ。
野放しにしておいたら絶対邪神とか召喚しようとするもん。
人間性とか倫理観とか絶対わかってないよ。
地球最後の日に「みんな死ぬんだから」とか言って人間狩りとかするタイプだよ。
どうしても情報不足なので長太郎くんのサイコパスっぷりが目立ってしまいましたが、よくある神様が人間のところに遊びに来るというお話。
鹿教湯温泉の由来も似たところがありますね。
こういった話は、たいてい神様が人を戒めたり、褒美を取らせたりするのですが、
そんな事する間もなく長太郎くんがぶん殴りましたね。
結論:神様だって遊びたい!
不開門=不明門 西内・霊泉寺
開かずの門、というのはホラー作品としてはかなりよく登場するアイテムです。
廃屋や学校の中に閉じ込められて、出ようとすると謎の力で扉が開かない、とかよく見ますよね。
また逆に「恐ろしいものを封じているから開けてはいけない」というやつもあります。
大抵、肝試しにきたアホな学生とかが開けちゃうんですけど。
次のお話は、そんな開かずの門と関係ありそうで関係ない話です。
むかし西内にある霊泉寺というお寺に、中国のお坊さんが何枚かの板を使って龍を描きました。
しかし、その龍はあまりに良い出来だったので命がやどり、イタズラばっかりし始めるのです。
なので、板を一枚外して龍を動けなくしましたが、そのタイミングでお寺が家事に!
龍「ちょ、熱いけど動けん。マジヤバイ死ねる」
坊主「しゃーない、板戻すわ」
すると龍は空へ飛んで逃げてきましたとさ。
ところで、その霊泉寺の門はこの火事でも開けなかったので「不開門」と呼ばれるようになり、開けると血の雨が降ると恐れられているのです。
完
門、関係ねぇ-!!!
いや、最後に出てきて何か意味深なこといってるけど、前半の事件と全く関係ないじゃん!!
動き出す龍がすごいんであって、門を開けないのは自分のさじ加減じゃん!!
ゴジラ映画なのに、主演のイケメン俳優とアイドルだけでポスター作ってるようなもんだぞ!!
タイトル詐欺だ、ふざけんな!
まあ、そこまで怒ることはないけれどこのお話、前半のストーリーが面白いので、どうしても後半の門の設定が弱く感じちゃうんだよなぁ。
まあ血が降るのはすごいけどさ。長太郎くんでもできるしね。
それでも今でも門は現存していて、ちゃんといまだに開かずの門なのは興味深い。
もしも霊泉寺温泉に旅行する際は、霊泉寺の門を開けてはいけない。
結論:霊泉寺温泉にいこう!! ちなみに鹿教湯温泉にも同じようなお話がある。
ほうじゅさま 依田 御獄堂
このお話は、怪異とか超常現象ではないんですが、読んでいてなんだか釈然としないというか、話がとっちらかっているというか、
まあ何となく興味深かったので取り上げました。
とにかく、違うそうじゃないって話です。
昔、塩田方面に住む若者が依田の中山の娘を狙って「夜ばい」にやってきたそうです。
農作物を盗んだり、田畑を踏み荒らしたり、悪行三昧なので中山の若者たちが夜警をしました。(分かる)
夜ばい組VS中山の若者、結果、夜ばい組が一人死んじゃいました。(分かる)
その罪を着せられ中山の若者頭が役人に追われてしまいます(分か、ん?)
若者は山寺へ駆け込み、お和尚に助けを求めますが、囲碁に夢中のお和尚さんは上の空(んん?)
ついに若者は役人に捕まり首を切られてしまいました。中山の仲間は「皆のために犠牲になった」と哀れみ、「宝寿院孤嶽天峯信士」の墓碑と祠を建てて埋葬した。(ええ話や……)
その後、山寺では囲碁を打つことは禁じられた。
違うだろこのハゲー!!!
そういうことじゃないんだよぉ!!
囲碁を打つとか打たないとかで解決する話でもないし、
そもそも罪人なんだから、お和尚さんが助けてくれないのはある意味当然だし、
そもそも囲碁に夢中で無視ってそれ、お和尚さん個人の問題じゃんか!!
役人の前に出て、正々堂々話せばよかったんだよ。
中途半端に逃げちゃうから、余計いらない勘ぐりをされちゃったんだよ。
それに本来なら捕まるのは夜ばい組のほうだろ! 分かれよそれくらい役人も!!
説明しなよ中山の若者!!
なんだこの倫理観とか教訓とか一切崩壊した物語は!!
(あと何気に原文の「夜ばい組」って単語もヤバイ)
まあ時代背景や地域ごとの格差もあったのかも知れない。
そう考えると悲しい物語なのだが、やっぱりどう考えても囲碁を禁止にするのは矛先が違う気がする。
結論:昔の塩田は世紀末
とまあ、ちょっと過激につっきりました。
民話というのは数々の人からお話を集めたものですし、細かい話を抜いてしまうので、
どうしても簡略にまとめるときにはツッコミどころのあるストーリーになってしまいます。
そこらへんを理解した上で、今回はあえて大げさに茶々を入れさせていただきました。
まだキツネや巨人など、他にも面白そうな民話はあるのですが、今回はこれくらいにしておきましょう。
こうやって色んな人が考え、独自に解釈して民話は増えていくのかもしれません。
※1 ティウンティウン
ゲーム、ロックマンが死んでしまう時に流れる音。銃に撃たれようが崖から落ちようがトゲを踏もうが、わけ隔てなく体を爆散させるという死に様はもはやお家芸。
※2 SAN値0
クトゥルフ神話TRPGというゲームから。
「sanity」つまり正気度である。この数値は恐ろしいことを体験するたびに減っていくのだが、SANが0。つまり正気がなくなると発狂してしまいGAMEOVERとなる。
※3ブッチャー、シーク
おそらく1970年~80年代後半までの日本の小学生を恐怖のどん底に陥れた二人。
つまり悪役レスラー。アブドーラ・ザ・ブッチャーとザ・シーク。
その暴れっぷりは悪魔そのもので、フォークに五寸釘、尖っているものならなんでも凶器に使う。
しかも更に怖いのが、こいつらタッグで登場するのに、当然のように仲間割れして躊躇なく凶器を使うんだ。
ただブッチャーは実は意外といい人っぽくて、CMに出てたりする。
ちなみに僕は1990年生まれだからリアルタイムでは見てないぞ!
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