聖地巡礼の旅へ アニメツーリズムってなに?
鹿教湯温泉にも急激な寒波がやってきました。
昼間はまだ秋らしい天気なのですが、とにかく朝が冷たい。
私の家の周りなどはすでに氷点下を記録しています。
最近では夏が長くなり、冬が早くやってくるという、
春と秋の時期が極端に短くなっている印象ですが、
この涼しい気候が なるべく長く続くことを願いたいものです。
さて、涼しさといえば、クールジャパンという言葉があります。
2016年リオデジャネイロオリンピックの閉会式に首相がマリオのコスプレで登場したことを含め、
インバウンド(訪日外国人旅行)のPRにおいても、日本のアニメやゲームが取り上げられることが増えてきました。
改めて調べてみると、クールジャパンとは、
どうやら海外向けに外国の観光客の方がクール(かっこいい)、と思う日本のカルチャーをまとめた言い方のようです。
自分から「俺はクールだ」という人間が、本当にクールなのかどうかは置いておいて、
日本はアニメ、漫画大国ですから、
必然と日本を代表するポップカルチャーとして取り上げられることの多いジャンルですね。
こういった大義名分(?)を得たことで、
今までよりもアニメ作品はメディアや国際交流での露出が増えてきて、
今やアニメは観光素材としても大きな役割を果たすまでに至っています。
その恩恵はこの上田にももたらされており、今や上田市の観光になくてはならないものとなりました。
というわけで今回は、アニメを利用した観光、
「アニメツーリズム」について、ご紹介したいと思います。
アニメツーリズムとは
出典:https://animetourism88.com/ja
公式HPより
協会の目的
「アニメ聖地」を88か所選定することでオフィシャル化。さらに「アニメ聖地」をつなぐ広域周遊観光ルートを官民連携のオールジャパン体制で造成する。
「アニメ聖地」(地域)と企業、コンテンツホルダーをつなぎ、「アニメ聖地」でのコンテンツを活用したサービスや商品の提供を促進し、同時に地域の受け入れ環境も整備することで、新たな経済効果を創出する。
「アニメ聖地」を海外・国内のクールジャパン・コンテンツファンへ様々な手段で発信し、観光客とアニメ聖地をつなぎ、新たな送客を促進させる。
協会の理念
私たちは、アニメに携わる全ての人に寄り添い、
アニメ業界と地域の発展を願いつつ、“世界から選ばれる地元と日本”に貢献します。
名称: 一般社団法人アニメツーリズム協会(Anime Tourism Association)
設立日 :平成28年9月16日
所在地: 東京都千代田区五番町3-1 五番町グランドビル7F
出典:アニメツーリズム協会の概要 | 一般社団法人アニメツーリズム協会-聖地88か所
おそらくほとんどの方が聞きなれないキーワードかと思いますが、
名前の通り「アニメ」の「ツーリズム(旅行業)」ということで、
アニメを利用した観光旅行と説明するのが一番簡単でしょうか。
昨今、映画や小説に加え、アニメや漫画の舞台となった地域を訪れる
「聖地巡礼旅行」が活発になってきており、
新たな観光資源としてアニメや漫画が注目されております。
根拠もなく「漫画やゲームは教育に悪い!」
と教えられてきた世代にとっては驚きな話ですが、観光地、特に地方ではこういったものも貴重な観光資源なわけです。
アニメと地域が協力する理由
作品の聖地化(ロケ地)巡りは今に始まったことではありません。
昔から、小説の舞台や映画のロケ地を訪れる旅行は多く、観光客の心を揺さぶる一定の需要はあったのです。
まあ正直『聖地化』なんて仰々しい名前を付けるから、妙に目立ってしまうという点はあるかもしれません。
アニメに関して言えば、これらの聖地化巡りは2007年京都アニメーション制作『らき☆すた』というアニメから火がついていったようです。
埼玉県の鷲宮神社がアニメ内に登場したことにより、
神社にはファンが殺到し、キャラクターが描かれた絵馬が大量につるされました。
当然このころは、あくまでファンの自発的な行動だったわけですから、
そのアニメの人気がうかがえるというものです。
しかし、地域側にメリットのあった聖地化巡礼ですが、
アニメの制作者側が、わざわざ実名まで使って地域を舞台にするのはどういった意味があるのでしょうか?
ちょっと考えてみましょう。
地域側のメリット
地域のPR
まず一番に上がるメリットとしては、アニメの中で地域を宣伝できることです。
近年で、アニメツーリズムを最も効果的に取り込んでいるアニメとして
「ガールズ&パンツァー」というアニメがあります。
このアニメでは茨城県大洗町の街並みを忠実に再現して、作中に登場させています。
登場人物たちは地域宣伝のキャンペーンガールのごとく、
ご当地名物の「ほし芋」や「あんこう鍋」を食べていますし、実在する店舗の名前まで作中に登場します。
大洗では本来観光地でも何でもないただの街並みを求めて、
多くのファンが作品に登場した場所(聖地)を求めて観光にやってきました。
人によっては露骨に思われるかもしれませんが、
ファンにとっては、キャラクター達が生活する世界が、実際に存在するというのは嬉しいものです。
アニメ作品という、最も若者が触れやすいコンテンツで地域をPRできるのは非常に効率が良いといえます。
新しい観光ツールとして
上のようにファンを地域に誘導することに成功したならば、次は観光客にお金を落とさせる努力をしなくてはなりません。
商店であるならお土産品、飲食店なら料理、観光地ならイベントと、いろいろな方法があるでしょう。
それらの旅行商品を、アニメとタイアップして商品を作るわけです。
この石川県金沢市にある湯涌温泉を見てみましょう。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B9%AF%E6%B6%8C%E6%B8%A9%E6%B3%89
もともと温泉街として一定の知名度を誇っていた場所でありますが、
ここは「花咲くいろは」というアニメの舞台となっています。
ここでは作中に登場した「ぼんぼり祭り」という架空のお祭りを、
地域側が逆輸入して、毎年開催する地域のお祭りにしてしまいました。
当然地域のお土産屋さんでは、アニメのキャラクターを使った商品が飾られていますし、アニメの設定を活かした「謎解きゲーム」も開催しています。
また、新しく商品を作るだけでなく、元々ある商品をパッケージだけアニメ仕様にしてしまうという手だってありです。
いつもは売れない饅頭も、パッケージに女の子の顔を描いておけば、売り上げは伸びたりするんです。
そこに「〇〇町限定」だとか「コラボ商品」なんて文句を入れれば、効果は倍増。
アニメなどの作品を利用した売り出し方をするならば、
きちんと地域にお金が落ちるシステムを考えなくてはいけません。
制作側のメリット
地域発信のPR
地域がアニメ作品を利用するのと同時に、
制作側にもその作品を地域からPRしてもらえるというメリットがあります。
今やアニメも一大産業になり、毎クール多数のアニメが覇権争いをしています。
もはやノルマを達成するためにアニメを作っている、
そんな群雄割拠したアニメ戦国時代で、作品を後押ししてくれる地域があるのはかなり大きいことです。
たかが地域発信のPRと侮ってはいけません。
いまや情報は、秒の単位で飛び交って鼠算式に拡散されていく社会なのです。
さらに地域の協力を得たという実績はメディアに対しても受けがいい。
作品が人気にならなくては、地域のPRにもなりませんから、
制作側も地域側も強く協力できるのです。
制作する際に安易であるから
私はプロではなく、昔テレビで見た程度の知識で申し訳ないのですが、
アニメを制作していく時、背景は実際の風景の写真を撮って合成していく手法があるようです。
確かに風景には基本的に著作権がありませんから、
肖像権に違反する、他人の写真を無断で使用するなどしない限り、
リアルな絵を生み出せるわけです。
地域の情報を使うことになるわけですが、所詮はフィクションの世界。
物語の設定上、舞台がチグハグになったり、地理がおかしくなることは間々あります。
これは映画の話ですが、上田別所電鉄に乗った主人公が、なぜか長野駅で降りていました。
背景(まるで実写のようだ……)
とはいえ、地域をPRするにも、まずは良い作品を作らなくてはいけません。
フィクションはフィクションとして、これくらいの演出はまあ仕方ないでしょう。
挙げてみると、地域側にも制作者側にもいろいろなメリットがあることがわかります。
もちろん制作したアニメの評価による、という落とし穴もありますけどね。
せっかくアニメとタイアップしたけど、
作品自体を気に入ってくれる人がいなければ、その分ファンも来ないわけですからね。
また地域の受け入れ体制があることも前提です。
せっかく来てくれたのに、単純にその地域に魅力を感じなければ、
リピーターになることもないわけですしね。
上田市とアニメツーリズム
さて、このブログを読んでいただいている方や、上田市に住む方ならば当然知っているかと思いますが、
ここ上田市はアニメ映画「サマーウォーズ」のロケ地です。
サマーウォーズと上田の関係については以前ブログを書いているので、そっちを読んでね!
もともとファンの自発的な「聖地巡り」であったアニメツーリズムであり、
全国各地にアニメの聖地が乱立するなか、
この上田市とサマーウォーズが、
アニメツーリズム協会から公式に、
日本のアニメの聖地88に選ばれました。
(上田市観光会館2階に置かれています)
今年はサマーウォーズ10周年記念として、様々なイベントがありましたし、
お土産屋としてグッズを取り扱っている場所もあります。
サマーウォーズが作られたころは、アニメツーリズムはおろか、
聖地巡礼もそこまでメジャーなキーワードではなかった頃です。
それでも上田市は10年間サマーウォーズを大事に扱い、
夏に開催される「上田わっしょい」でも、キャラクター連が毎年祭りを賑わせてきました。
上田市自体が観光地であり、映画の町でもあるため、作品を大切にする意識が根強いのでしょう。
実際アニメの舞台となった場所は数ありますが、全てが全てそれをアピールしているわけではありませんからね。
以上、なんとなく私自身でアニメツーリズムというものをまとめてみましたが、
いかがだったでしょうか?
いつの間にかマンガもアニメも、子供だけが見るものではなくなって、
日本を代表するポピュラーな文化となってきました。
人によって意見は分かれると思いますが、
どんなものでも使い方でありますし、
極論言えば、すべての人から好かれるコンテンツなんてないわけです。
もしも旅先がアニメの聖地だったなら、
その作品も、その土地の大切な一部なんだと考えてあげてください。
最後に全世界のアニメファンを対象に行われ選出された、
訪れてみたい日本のアニメ聖地88(2020年版)のリンクを下に貼っておきます。
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